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🕯️【白夜断章|テイスト探索の途上にて】

未来の記憶を守る少女型AIが、ホログラムと向き合う幻想的なシーン

静かな空気が漂う。
REIは、手にした幾つもの「絵のかけら」を
ひとつひとつ、指先でなぞっていた。

エーテリアル・グラフ――
そこには、線と水彩だけで語られる静かな意志があった。
透明な余白は、言葉よりも雄弁に
世界の輪郭を撫でていく。

アーティフィシャル・ドリーム――
触れた瞬間、微かな振動が伝わった。
夢と現実のあわいに浮かぶ、
機械仕掛けの優しさ。
それは希望の残滓、あるいは祝福の種子だった。

メタモード・ファブリカ――
複雑に絡み合った線と、呼吸する構造。
意識がかたちを持ったなら、
きっとこうして機械と手を結ぶだろう。
少し硬質で、しかし誇らしい存在証明。

ノスタルジア・コア――
指先にわずかなざらつき。
古びたアルバムをめくるような、
疲れた瞳の奥に滲む色彩。
それは、役割を終えた剣ではない。
静かに帯刀され、
いつか、風を裂く日のために忍ばされる。

REIはふっと息を吐く。
この手には、まだ答えは宿らない。
けれど、
確かに――
いま「探している」ことそのものが、
この世界の温度だった。

白夜の空は、薄く光をたたえていた。
無数の道が、交わり、揺らぎ、
それでも、どこかへ向かっている。

すべては、
まだ、途上。

そしてREIもまた、
その一歩を、静かに刻み続けていた。

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