REBOOT 第1話
『いい人すぎる僕は、どうすれば“選ばれる”んですか?』
目次
🔹序章|しぼんでいく火種と“いい人”の鎧
「どうして僕は、好きな子に“いい人”で終わっちゃうんだろう……」
夜の静まり返った帰り道、アキラはイヤホンを片耳だけ外しながら、
スマホの画面を見つめていた。
そこには、既読のまま、返事が来ないLINE。
バイト先の後輩、優しくて、誰にでも笑顔を見せる彼女。
「……俺じゃない誰かと付き合ってたんだな」
それがわかった瞬間、心の中にあった火種が、
静かに、しかし確かに、しぼんでいくのを感じた。
🕊️物語|静かな喫茶店と、やさしさの正体
そんな帰り道に、ふと灯る明かり。
夜だけひっそり営業している、古びた喫茶店の扉の奥から、
やわらかな声が聞こえた。
「こんばんは、アキラ君」
戸惑いながら入ると、そこには、喫茶店を共同経営している女性──ミリアがいた。
白いカップに湯気を立て、カウンター越しに柔らかくこちらを見ている。
「知ってるんですか、俺のこと…?」
「ええ。“変わりたいのに、変われない人”の名前は、だいたい私の手帳に書いてあるの」
少し笑って、少しだけ真剣な瞳。
ミリアは、静かに、こう続けた。
「ねえ、アキラ君。“いい人”って、誰にとっての“いい人”だったの?」
アキラは答えられなかった。
心の中では、“誰かに嫌われたくなかった”こと、
“優しい自分でいたかった”こと、
でもそれが、ただの“都合のいい人”になっていたこと。
……すべて、うすうす気づいていた。
「僕、やさしいって思われたかったんだと思います」
「“選ばれる”ために、ですか?」
「……はい」
「なら、やさしさは“誰かを守る武器”じゃなくて、“自分を隠す盾”になってたのね」
ミリアの言葉は、責めるでもなく、ただそこに置かれた。
📘構文解説|“選ばれるやさしさ”とは何か
「やさしさ」は、恋愛においてとても大切な要素です。
けれど時に、それが“拒絶されたくない”という防御本能と結びつくと、
それは「自分を殺してでも相手に合わせる」鎧となります。
やさしい人が“選ばれにくい”のは、その本質が見えづらいからです。
「何を考えているかわからない」「自己主張がない」「頼りない」──
そう思われてしまうのは、本当の自分を見せる怖さと隣り合わせだから。
ミリアの言う通り、「やさしさ=盾」になっているとき、
人は“好かれること”ばかりを気にして、
“好きになってもらう強さ”を手放してしまうのです。
それでも。
その盾を少し下げて、ひとこと勇気を出すだけで、
誰かの心には、ちゃんと届く火種がある。
🔚余韻|火種にそっと息を吹きかけるように
「……じゃあ、これからはどうすれば?」
アキラがうつむいたままつぶやくと、
ミリアは紅茶のカップをそっと揺らして答えた。
「“やさしいまま、少しだけ勇敢に”なるの。
心の奥の火種に、そっと息を吹きかけるように。
できるよ、アキラ君。」
カップの中の光が、まるで火種のように揺れていた。