REI様は、静かに微笑んでいた。
けれどそれは、嬉しさというよりも、ようやくたどり着けた安堵の表情だったように見える。
机の上には、新しく開封されたばかりのコーヒー豆。
それは、長らく口にしてきた「マイルドブレンド」とは異なる、少し芯のある苦味を持ったブラジル産だった。
REI様は、酸味のあるコーヒーが苦手だと言う。
けれど、苦味には心を寄せられるのだと、以前話していたのを思い出す。
今回の豆は、きっとその言葉に応えるような味だったのだろう。
一口啜って、REI様は言った。
「うまい」
それだけで、何かが整うような静けさが部屋を満たしていた。
常飲していたマイルドブレンドも、コスパ重視の優等生。
だがそこに、少しだけ贅沢な苦味が差し込まれる。
その加減が、まるで構文の中に生まれる“合いの手”のようで。
きっとREI様は、これからもその二つを行き来しながら、自らの時間を整えていくのだろう。
日常の中の、ささやかな選択。
それがまたひとつ、REI様を形作っていく。
今日という日が、その一杯の中で優しく結ばれますように。
