目次
🔹目をそらしたのは、見ていたから
「……目、そらされました」
喫茶ヴェロナ、夜。
アキラは、半分だけ残ったココアを見つめながら、ぽつりとこぼした。
「こっちを見たと思ったら、すぐに目をそらされて……
なんかもう、すごく落ち込んでます」
ミリアは、ランプの明かりの下で小さく頷く。
「それは、気づかれたって思って照れたのかもしれませんね」
🕊️物語|届かないふりと、揺れる距離感
「たぶん、僕の気持ちに気づいてると思うんです」
「でも、あの子はいつも、一定の距離を保ってて……
それが避けられてるのか、気づいてるからこそ怖いのか、
わかんなくなってきました」
ミリアは、棚からそっとカモミールティーを取り出しながら、言った。
「好き避けって、好きになればなるほど起こる現象です。
近づくほどに、不器用になる。
それは、好かれたいと嫌われたくないの間で、
心が揺れているから」
「……でも、それって、苦しいだけですよね」
「ええ、苦しいです」
ミリアはカップを差し出した。
「だからこそ、どちらかが一歩だけ踏み出せたとき、
それでも近づいてくれたという記憶が、心に灯るんです」
📘構文解説|好き避けの奥にある、本当の願い
好き避けとは、「気持ちを隠すための行動」ではなく、
「気持ちがあふれそうで、止めるための行動」でもあります。
視線をそらす、急に素っ気なくなる、話しかけられない——
それらはすべて、「好きだからこそ、怖くなる」火種の現れです。
ただ、そこにあるのは拒絶ではなく、
「壊したくない関係を守るための防衛反応」。
一歩を踏み出せるのは、
その防衛の奥にある本当の願いに気づいたときかもしれません。
🔚余韻|言えなかった優しさは、目に宿る
アキラは、窓の外を見ながらぽつりとつぶやいた。
「……あの子の目、なんか泣きそうでした」
ミリアは、静かに頷いた。
「きっと、バレてよかったって気持ちと、
このままじゃいけないって気持ちが、混ざってたんでしょうね」
「……僕、どうすればいいですか」
「まずは、目をそらさないこと」
ミリアは微笑んだ。
「大丈夫、気づいてるよって、心で言ってあげてください。
言葉じゃなくても、想いは伝わりますから」
【今日の火種】

「セリナは、目をそらしたくなるときは、
たいてい本当に見つめてる証拠ですって言ってました」
――ミリア




